ガルパン最終章第2話感想(追記あり)

 第1話から1年半……完結まであとどれだけかかるのかこの作品。以下ネタバレ感想です。

 

 いやーボカージュきれいでしたね。『パットンズ・ベスト』(VG/HJ)のマップを思い出しちゃいました。でも戦車砲の一発であんなふうに啓開できるものなんでしょうか。ヘッジロウカッターいらなくないですか。

 

 1回戦をなんとか乗り切った大洗女子でしたが、対戦相手のBC自由学園はエリート校と庶民校が合併してできた過去があるんでしたね。するとこのBC自由学園、もしも大洗女子が他の学園艦に併合されてたらどうなっていたか、を想像する一つのモデルでもあります。
 もちろん(みほが黒森峰に戻りかけていたように)生徒が複数の学園艦に分散転校させられる可能性も高かったでしょうし、受け入れる側の問題についてはサンダース考察の1(3)で記しましたが、例えば大洗女子がもう一つの弱小校と対等なかたちで合併させられたとするならば。そこには、安藤と押田のようにお互いの文化・伝統をできるだけ尊重しようとしながらも、しかしどこかで相容れない部分を残し、時にはあからさまにぶつかり合わざるを得なかったかもしれません。
 その意味で、BC自由学園は大洗女子の一つの未来を映し出す鏡であり、またそこでマリーがああ暢気に見えて2つの伝統の間でどれほどバランスをとる努力を続けてきたかを想像させます。そのストレスで甘いものも食べたくなるし薔薇風呂にも入りたくなる。いやそれは本人の贅沢趣味でしょうけど、角谷前会長の干し芋と似たような気配を感じたりもしたわけです。
 さらにいえば、これがフランス・アンシャンレジュームの貴族階級と市民階級の(そしてベル薔薇の)パロディだからまだ何とかなっていますけど、第二次世界大戦中のヴィシー政権と自由フランス政府をモチーフにしていたらどんな修羅場が待っていたことか。背筋が寒くなります。

 

 さて、トーナメントは他の1回戦も終了した模様。2回戦の組み合わせは記憶のかぎりでは、大洗女子と知波単、サンダースと継続、黒森峰とプラウダ、聖グロとアンツィオ、でしょうか。右側の山では、聖グロが勝ち上がって大洗女子と公式トーナメント初対決となるのか。それともエリカ率いる黒森峰がみほの大洗女子に挑むのか。ぼくとしては第1話感想でも書いたとおりエリカとみほの戦いを期待するばかりですが、黒森峰伝統の・西住流王道の規律ある正面からの戦いぶりを垣間見せたエリカが、さてカチューシャやダージリンにどう立ち向かうか。見ものです。(あれ、アンチョビは……?)


 そして大洗女子では、桃の家族の姿が描かれました。なんとかの子だくさん。さらに母親は病身、自営業の文具店は旧態依然であまり景気は良くなくといった具合。パンの耳を揚げたのが出てきたときは思わず(うっうー!)と心の中で叫びましたが、あの場面でいくつか腑に落ちることがありました。
 まず、桃の頑張り屋さんだけど不器用な性格の、育つ由来がここにある。あの愛想のない店長が父親だとして、今風の店内にする気が一切なさそう。昔ながらの商売を真面目に続け、それが客離れを生んだとしてもどうもしないし、どうすればいいか分からない。家族を養う立場としてあんまり無策にも思えますけど、でも何ができるかと言われれば世の中たしかにそういうものですし、逆に桃たちがこの学園を守るためにみほを掲げて戦車道大会で優勝するという一手に縋らざるを得なかったというのも、たまたま結果オーライでしたが同じようなギャンブルを一家の主が選ぶわけにもいかない。でも、桃自身の経験は、彼女が現実に突破口を開こうとするとき、決して小さくない推進力を与えるような気もするのです。
 次に、桃が生徒会室であんこう鍋を囲んだり、トンカツ屋で戦車カツを食べたりしてたTVシリーズ場面を思い出すと、あれ家族みんなとだとなかなか食べる機会ないのかもしれないなーとふと。もちろん桃は自分だけよければいいという子じゃないけど、逆に自分だけおいしいもの食べる後ろめたさに縛られる時期も過ぎているはずで(角谷たちとの楽しい時間そのものは素直に満喫したいだろうから)、自分がおいしいもの食べたぶんをどこかで家族にお返ししてるんじゃないかな、と想像したりします。試合で遠征するとき、甘味のお土産買ってたりするんですかね。生徒会費で(いけない)。
 そして、沙織が学内連絡のIT化を提案するとき、桃はいかにも古くさい文書掲示などにこだわるんですが、これは融通が利かないというよりは桃自身が述べているとおり、相手と直接会う・言葉を交わすことの大切さを、生徒会広報としてこの巨大な学園艦全体を導いてきた実感のうえで示しています。お銀たち船舶科のメンバーが桃にだけは一目おいているのも、そうやって艦底にまで不器用に誠実に足を運び顔を合わせようとしてきた桃に、言葉のうわべだけでない一貫した信念や学園生徒への分け隔てないまなざしを、看取したからなのでしょう。それがいま、桃を助けてくれているという。よかったね桃ちゃん。

 

 追記:知波単学園のこと書き忘れてました。

 西隊長・福田隊員の成長ぶりは、劇場版の大学選抜との一戦ですでに道筋がつけられていましたので、そこのとこはまっすぐ来たなーという印象です。あとマレー半島かどこかみたいな密林が怖い。地形に合致した車輌による水陸からの挟撃や夜襲という、いかにも日本軍モチーフらしい戦いぶりですが、つまりこの大会は夜中もそのまんま試合続行なんですね。プラウダ焦土作戦もいけるのか。観戦者はどうしてるのか。完徹のダージリンオレンジペコがいつもの調子で紅茶を嗜んでたりして。

 

 追記その2(7/8):思い出したら気になってきた場面について。

 桃の実家訪問に続く生徒会室の一幕。沙織が華と優花里と作業をしながら、桃先輩は私立難しいかも(家計的に)という感じの話をしてるんですが、その背後わりと近い位置にあるソファー周りに当の桃たち先代生徒会メンバーがいるという。すぐ近くに本人がいるのに、けっこう大きな声でそういう話をしちゃう子でしたっけ沙織。先輩たちがいることに気づいていないはずはない描写だったと思うんですが、このあたりどう解釈したらいいのか。ぼくが大事な情報を掴み損なっている可能性もありますけど。

 もう一つ、知波単の戦車があの窪地に滑り落ちてしまった場面で、罠にかけた側の大洗女子は上方からもっとじゃんじゃんばりばり砲撃してもよかったのでは。場面としてはいくらか明るかったけど実際の光景ははるかに闇が深いのだとすれば、そう簡単に狙い撃てないということかもしれませんし、みほたちも砲撃しやすい位置をまだ確保できてなかった(車体下部を晒してしまうと逆に装甲薄い場所を狙われてしまう)ということかもしれませんが。なんとなく、西・福田たちのやりとりを続けさせる猶予を得るため、砲撃をゆるめにしてたかの印象があります。