開店休業ではありますが

 こちらを読んでつらつらと。

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 インターネット上の「本業」という感覚、ぼくもかなり強く持ってます。以前も何度か書いた覚えがありますが、自サイト(このブログではなく)を開こうとした16年ほど前に、メインコンテンツ(閲覧者へのおもてなし)をどうするかを結構まじめに考えてました。当時の錚々たるえろげレビューサイト・テキストサイト群、そのうちぼくが日参していたえろ・ネタ系(『エロゲカウントダウン』や『国際軽率機構』など)と批評・叙情系(今木さんのところ(夏葉さんによる保管)や『アシュタサポテ』など)の2大グループのいずれかに加わる能力も自信もなく。さらに、サイトを開こうとした直接の原因は、箭沢さん・MK2さんの『づしの杜』や、しのぶさんの『魔法の笛と銀のすず』に憧れてでしたから、この方々の独特の文章を真似できないのは当たり前だとしても、得意分野がなるべく重ならないような、しかも自分も閲覧者も楽しめる隙間はないものかと、探してたわけです。

 まぁともかく読み物を書いてみようということで、最初はゲーム感想をネタ系と叙情系の中間くらいな感じで書き出し、あわせて日記を綴り、両方がある程度溜まったところでサイトを公開しました。そう、閲覧者というお客様を迎えるのだから、ちゃんとした店構えをこしらえておかなければ、という感覚があったのです。ただ、始めてしばらくは方向性が定まらず、どうしたものかと思案に暮れていました。

 ところがアニメ版シスプリと出会ったのをきっかけにして、作品に感じたことだけでなく、作品内容について自分の中であれこれ考えを巡らすようになりました。この作品はネット上での評価があまり芳しくなかったのですが、ぼくはすんごい高く評価しており、ずれが気になってもいたのです。そこで、まず第3話をとっかかりにして、この作品の面白さや、理屈がちゃんと通っている証拠を、説得的かつ読んで楽しめるものとして文章化しようとしたとき、考察というスタイルを発見しました。

 これがぼくにはぴったりの隙間でした。一見大真面目な、しかし本気と冗談の境目が分からない文章。作品愛を理屈っぽさで照れ隠ししてるわけですが、このスタイルは先達の得意分野とうまいこと重ならず、しかもぼくの性格・能力と噛み合ったのです。もちろん、ただ自分と相性がよいというだけで書けるものでもなく、当時の閲覧者から寄せられる反応は、ぼくの文章を読んで楽しんでいただけている、という嬉しい実感を与えてくれました。

 そして、そういう遠方からのお客様よりに先んじてぼくを支えてくれたのが、ネットご近所の方々です。考察をサイトに公開する前に読んでチェックしてくださったり、新たな視点を提供してくださったり、何よりぼくが店の“前”や“外”で何かやらかしても、この内々で慰めや諭しをいただけました。本当にありがたいことでしたし、たしかにそこには「商店街」というイメージがかなりしっくりします。ただし、ぼくの場合はこのように、ネットご近所の方々の店がうちと隣り合って並ぶ感じですが。そして、ご近所の店ですでに素敵なものをいろいろ提供していただいてるから、自分の店では別のものをお出ししよう、という。何かの流れで商店街のお祭りもしましたし、そこには近い趣味・性癖を持つ者同士の協同意識と、お互いの大切な領域には干渉せず得意分野は尊重するという距離感、そして似たような方向を向きながらそれぞれ違ったルートを選んでお互いが負けじと張り合うような穏やかな競争意識とが、混じり合っていたように思います。今では管理者のサイト同士ではなくSNS上でのやりとりが専らではありますが、そんな空気はあまり変わらずにあるのではないでしょうか。

 今のネット界では巨大なショッピングモールもあるし相場師の寄り合いみたいな場所もあるけど、ぼくはやっぱり商店街のつきあいの中で、たまに「本業」のシャッターを上げてみたくなるのです。この流行遅れのものはたぶんここにしかないよ、と。