『りゅうおうのおしごと!』第2巻メモ

 というわけで第1巻メモに引き続き、第2巻メモです。こちらで書いた感想に盛り込んだ分は、今回繰り返しません。

 

 p.9 「隣にちょこんと座って」、あいは八一とぴったりくっついてても詰将棋に集中できる。天衣はそうではない可能性大(p.155)。

 

 p.19 「何故か俺が彼氏と間違われて」、銀子がそう見えるようにストーカー等に対して振る舞っていた可能性。連盟内投票も参照(p.48)。

 

 p.25 「鬼沢談」、SM小説家・団鬼六(故人)。愛棋家としても有名で、若き日の行方八段など活きのいい若手の面倒をよくみていた。

 

 p.40 「思わずスマホを取り落とした」、ニコ生将棋タイトル戦中継にはよくゲスト棋士からの生電話がかかってきたりするが、解説役として出演していた羽生がスマホに何気なく出たら、相手が谷川会長(当時)だったため珍しく驚きを顕わにして慌てたことがある。

 

 p.42 「今の将棋界では師匠が弟子に直接稽古をつけることも一般的になっている」、森下九段が入門時の70年代末に師匠の故・花村九段にものすごい数の指導対局をしてもらった、というあたりが将棋雑誌などで知るかぎり最初期の事例。

 

 p.44 「将棋を指す」、より正確には「(八一と)将棋を指す」。

 

 p.47 「裏番長」、女流であだ名が番長といえば香川愛生女流三段だが、タイトル獲得実績もある現役。引退者では姉御肌の鹿野圭生女流二段などを思い出すが、会長の秘書などではないし趣がだいぶ違う。

 

 p.50 月光会長の元は明らかに谷川浩司九段(十七世名人資格保持者)、ただし盲目の棋士ではない。「光速流」の名で知られ、終盤の寄せの速度を革命的に進歩させて羽生世代にも多大な影響を及ぼした。矢倉はもちろんだが、何といっても「伝家の宝刀」角換わり腰掛け銀の名手。羽生との竜王戦での7七桂は伝説。p.239のタイトル履歴など完全に谷川。なお、盲目の棋士という設定は故・西本馨七段か(『将棋ペンクラブログ』の記事参照)。

 

 p.52 「護摩行」、久保王将の慣習。

 

 p.55 「双子の弟です」、将棋界には畠山成幸八段・畠山鎮七段という双子の棋士がおり、しかも三段リーグを揃って突破し同時に四段昇段したという。

 

 p.56  「陣太鼓」、あまりにも有名な陣屋事件については『将棋ペンクラブログ』のこちらの転載記事。またのこちらの対談記事も。

 

 p.67 「受け師」、柴田ヨクサルハチワンダイバー』のヒロイン・そよのあだ名「アキバの受け師」。その影響で木村一基九段が「千駄ヶ谷の受け師」と呼ばれる。近代将棋界最強の受け師といえば、故・大山十五世名人。

 

 p.74 「反社会的勢力と繋がりがあるわけがない」、米長会長時代の後半は怪しい雰囲気だった……。『将棋世界』で羽生がペテン師まがいと対談させられたり……。

 

 p.76 「姉弟子本来の美しさ」、八一も銀子のそういうとこは第1巻と同じく素直に評価してる。

 

 p.77 「持ち時間を二分しか使わず」、タイトル戦ではないが大平武洋六段は対局日に開催されていたZONE解散コンサートに行きたいがために持ち時間1分のみの消費で対局し勝利しコンサートにも間に合った。

 

 p.79 「研究勝負」、例えば名人戦でも、最新研究を知っていた森内が、まだ知らずにいた羽生を一方的に打ち負かしたことがある。また、故・米長九段が7度目の挑戦で中原十六世名人から名人を奪取したとき、本来終盤型だった米長が森下ら当時の気鋭の若手棋士達にお願いして研究会を開き、そこで磨いた最新の序盤戦術を武器に中原を圧倒し4連勝した。

 

 p.83 「駒に歯形」、幼い頃の谷川九段が兄に将棋で負けたとき、悔しさのあまり噛んだ駒には今なお歯形が残っているとかないとか。

 

 p.85 「銀子ちゃんがその子達を潰して回った」、銀子……あんたそんな頃から不器用な愛情表現を……。一方、これが初めて通用しなかったのが、あい。「女の敵はね。いつも女なのよ」(p.87)

 

 p.107 「もう誰も、おまえに勝てなくなる」、あいの「だれがいちばんですか?」(p.242)八一の「俺が一番大事に思っているのは、あいだから」(p.186)天衣の「誰が一番なの?」(p.282)などと対照すること。

 

 p.123 「『剃髪の一局』」、中原名人に森けい二九段(当時八段)が挑戦したときの第1局でのエピソード。

 

 p.128 「和服の襟を何度も整える」のは誰か知らないけど、「空咳が止まらなくなったりする」のは加藤一二三九段か佐藤康光九段か。

 

 p.128 「ありますよ」、盤上没我だったはずのあいは、八一の挙動不審に注意を集中しているうちに、対局中の対人観察能力までも向上させている。しかしこれは表裏一体のものとして、対局中に盤上のみならず対局相手(と自分との関係)まで考えてしまうという、不純さを獲得することでもある。その現れは、八一にとって自分が二番目なのかという不安から師匠のくれた扇子を握りしめながら(p.198)、天衣を「師匠が贔屓してるんだから勝てない」(p.230)と感じてしまうという姿。

 

 p.139 「雑誌に書い……噂で聞くし。」、銀子……年頃の乙女として甘味に興味あるだけでなく、こないだUSJに行けなかったことをひとり感想戦して遠くの娯楽施設に行くのはハードル高いので近辺のスイーツ処で日常デートはどうかと新たな銀子システム構築を試みたものの自分から言い出せる機会がなかったところで他ならぬ八一からまさかのお誘いが、と思いきや頓死しろ八一。

 

 p.141 清滝九段のプロフィール、関西棋士でこの性格でこの棋歴って誰なんだろ。タイトル獲得してないものの、A級8期のうち名人挑戦2回というのは結構すごい。しかも八一たちが弟子入りしてからの挑戦(「そこから頑張って」p.175)なので、40歳を過ぎてからということになる。なんとなくもう一花咲かせる気配あるけど、後の巻で竜王挑戦で師弟対決という展開はあるのか、それともあの「神」こと現名人が立ちふさがるのか。

 

 p.144 「お漏らしです。」、うむ。

 

 p.145 「また週刊●潮にあること無いこと」、●春もね。ちなみにこれを理由として両誌とも一生買わない。

 

 p.153 「うちの弟子と被る」、本当は天衣のほうがずっと前から八一の弟子になろうとしてきたのに、亡き父も2、3年前までそう言っていたのに(p.270)、なぜ後から弟子入りを志したあいのほうが「うちの弟子」と呼ばれ、自分が「被る」と言われてしまうのだろう。敵。よって潰す。

 

 p.161 「あなたも『あい』っていう名前なのね」、あなた「も」。まず天衣「が」、次にあい「も」。最初の弟子があいだという話を八一から聞いたばかりなのに、自分とあいの序列をたった一文字で無意味にしてしまう恐ろしい子。しかも、あいがこれに反発してあくまで順番にこだわるだろうと予測したうえで、続く「最初のあいちゃんに飽きちゃったのかな」でそっちの道も瞬時に閉ざすという、「敵の指したい手を事前に殺す勝負勘」(p.67)。

 

 p.165 「いえ出します」、「家」は小2で習う教育漢字だけど、あいが漢字苦手というよりも、ショックの凄まじさゆえ画数の多い漢字を書く余裕がなかったのでは、と推測。

 

 p.171 「序盤早々から飛車と角を交換する珍しい形」、まったく違うだろうけど2014年の第72期名人戦第1局を思い出す。あれほんと凄すぎて面白かった。

 

 p.176 「一緒に強くなれる相手」、師匠は銀子の才能の限界を察知しつつも、八一の才能を開花させたのが銀子である(そして銀子もまた八一によって)ということを理解している。

 

 p.181 「体育座り」、和服で頭を膝の間に埋める姿は記憶にないけど、渡辺棋王順位戦C級1組の最終局で敗れたとき、昇級絶望と思って体育座りして頭伏せてた写真があったような(ただし競争相手も敗れたため昇級できた)。タイトル戦だと竜王戦王位戦での挑戦者木村九段だろうか。

 

 p.188 「ところで姉弟子」、おーまーえーなー。あー。もー。うがー。

 

 p.189 晶の「好物」、よく読んだらやばない?

 

 p.195 「師匠なんてどうせ書類上」、そうね心の本籍は八一のとこだもんね。

 

 p199 「しがみついてきたり」、これ銀子だからたぶん演技ではないですね。

 

 p.202 「ならば次は」、このときの久留野の判断ってけっこう影響でかそう。

 

 p.209 「全く異なる思想」、例えば糸谷八段の著書『現代将棋の思想  ~一手損角換わり編~』(マイナビ将棋BOOKS 2013)第1章での説明を参照。

 

 p.229 「大粒の涙」、いつぞやの小学生名人戦準決勝で敗れた少年が、森内名人から詰み手順があったことを指摘された瞬間に「あっ!」と声をあげてぼろぼろ泣き始めた、という場面を思い出す。

 

 p.231 「もっと、強くなりたい」、この小説刊行後のつい最近に藤井六段がこの言葉を語り、中村太地王座も衝撃とともに初心に返れたなどの逸話あり。

 

 p.235 「仲直りの約束は、いつだって将棋だ」、八一と銀子もずっとそうだったはずで、その実感もこもっている。

 

 p.238 「白いドレス」、いやーんそれもうウェディングドレスじゃーん。と最初思ったけど、「お嬢様の洋服の匂い」好き(p.189)な晶としてはたんにお気に入りの匂いのする白いドレスを念頭に置いてるだけかもしれぬ。

 

 p.240 「えへー♡」 か わ い い。

 

 p.245 「小学生は」バスケがしたいです。

 

 p.246 「帝位リーグ」、おそらく元ネタは王位戦本戦リーグなので持ち時間それぞれ4時間。作品中では昼食休憩場面は省略されている。なおタイトル戦でもないのに棋士が和服を着てくることはあり、故・米長九段の引退直前の王将リーグでは佐藤康光九段たちが敬意を表して和服を着用し(最初スーツ姿だった米長もそれに応えて、午後開始までに和服を取り寄せて着替えたとか何とか)、また田丸九段が順位戦B級2組最終局で相手の昇級を阻止するため気合いを入れて和服で臨んだ(そして勝利して米長哲学を全うした)とか、いろいろ。

 

 p261 「5八金と受けていたら」、「3一角」で王手できる(しかも同玉で取れるので2二にいる)玉を、ずっと離れた場所にいる5八金で(詰めろ逃れの)「詰めろ」にできるということは、2二から4七あたりまで追って詰ませる順を、会長は指しながら読んでいたことになる。しかも、終局直後の疲弊しきった頭でありながら、八一はそれを聞いて「一瞬で評価を下し」て「……あっ!?」と叫んでいる。つまり瞬時に読めている。この恐るべき力こそ、銀子がまだ届かない高み。

 

 p.265 「欲しいものは全て、将棋で勝つ事でしか手に入らない世界で生きているから。」、はいこの文章を銀子の声で想像しましょう。

 

 p.266 「初めて経験した記録係」、奨励会6級で名人の(たとえアマ名人との記念対局だとしても)記録係を仰せつかったというのは、清滝九段から話を聞いていた月光名人の配慮によるものだろうか。

 

 とりあえず以上です。